オノマトグラム〜オノマトペから読み解く痛みの種類〜

オノマトグラム
調査:痛みが長引く疾患を抱える人に、痛みをオノマトペで表現してもらいました。
結果:その回答を医学的分類に対応して集計しました。
 

痛みのオノマトペリサーチ

痛みを抱える人は、どのようにそれを感じているのでしょうか?長引く痛みに悩む人に、痛み方を「オノマトペ」で表現してもらいました。部位・疾患ごとに回答をみてみましょう。

群発頭痛

ある期間に集中的に発生する規則性を持った頭痛で、「目がえぐられるような」などと表現されるほど非常に強い痛みを伴いますが、痛みのあまりじっとしてはいられません。タバコやアルコールに誘発され、必ず片側が痛み、涙や鼻水、鼻づまり、結膜の充血やまぶたのむくみといった症状を伴います。いったん症状が現れると、毎日同じ時間に十数分から1時間ほど痛むようになり、その状況が数週間から数ヵある期間に集中的に発生する規則性を持った頭痛で、「目がえぐられるような」などと表現されるほど強い痛みを伴い、痛みのあまりじっとしてはいられません。タバコやアルコールに誘発され、必ず片側が痛み、涙や鼻水、鼻づまり、結膜の充血やまぶたのむくみといった症状を伴います。いったん症状が現れると、毎日同じ時間に十数分から1時間ほど痛むようになり、その状況が数週間から数ヵ月続きます。この時期を過ぎると痛みや症状はなくなりますが、その後、半年~2、3年周期で再び現れます。どちらか片方の目の周囲や奥から痛みが始まり、徐々に範囲が広がっていきます。20-40 代の男性に多くみられますが、最近は女性にもみられます。月続きます。この時期を過ぎると痛みや症状はなくなりますが、その後、半年~2、3年周期で再び現れます。どちらか片方の目の周囲や奥から痛みが始まり、徐々に範囲が広がっていきます。20~40 代の男性に多くみられますが、最近は女性にもみられます。

片頭痛(へんずつう)

頭の片側、もしくは両側のこめかみあたりに現れる頭痛で、痛みは4~72時間続きます。脈打つような強い痛みとともに吐き気・嘔吐を伴うこともあり、いつもは気にならない程度の光がまぶしく感じたり、音や、香水やたばこの臭いが気になったりします。動くと痛みが増し、ひどいときには寝込んでしまうこともあり、日常生活に支障の大きい頭痛です。また、患者さんによっては、痛みの30分ほど前に、目の前がチカチカしたり、ものが見えにくくなったりする「閃輝暗点(せんきあんてん)」と呼ばれる前兆症状が出ることもあります。女性に多くみられる頭痛で、30代の女性では5人に1人が片頭痛持ちとも言われています。

緊張性頭痛(きんちょうせいずつう)

姿勢の悪さや身体的・精神的ストレスなどが引き金となって現れる、もっとも一般的な頭痛です。肩こりなどの筋肉の緊張で血流が悪くなると、痛みを引き起こす物質が生じ、頭が締め付けられるような鈍い痛みが出ます。温めたり運動すると痛みが軽くなり、ストレッチなどで楽になることが多く、ほかの頭痛と比べると痛みの程度は軽いのが特徴です。

肩関節囲炎(かたかんせつしゅういえん)

いわゆる「五十肩」。肩関節の骨や靭帯などが老化することで、関節の周辺に炎症が起こり、結果として痛みが生じる疾患です。衣服の着脱など、肩関節の動きを伴う日常動作が制限されます。男女とも50歳代を中心に発症します。

脳卒中後疼痛(のうそっちゅうごとうつう)

脳卒中によって脳にダメージを受けたことが原因で、脳卒中を発症後、数日から数か月を経過した後に痛みが生じる中枢性神経障害性疾患です。多くの場合、脳卒中に伴って麻痺した部分に出現します。左右いずれかの顔面、四肢、体幹、下肢の痛みに加え、温痛覚過敏症状やアロディニア(触れるだけで痛みを感じる状態)も発症します。

脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)

腰の背骨の神経が通っている脊柱管が、老化などによって狭くなり、中の神経が圧迫される病気です。下半身に痛みやしびれ、麻痺が生じるほか、長い時間歩き続けることが困難になる「間欠跛行(かんけつはこう)」と呼ばれる歩行障害が伴うこともあります。

坐骨神経痛(ざこつしんけいつう)

坐骨神経は腰から足の先まで伸びている、非常に太く長い神経で、歩いたり、バランスを取る上で重要な役割を果たしています。坐骨神経痛とは、この神経が何らかの原因で圧迫されたりすることで、お尻や太もも、足にかけて生じる鋭い痛みやしびれ、麻痺などの症状のことです。一部分だけに強く感じることもあれば、足全体に強く感じる場合もあります。

頸椎症(けいついしょう)

頭部を支えている首あたりの骨(頸椎)が加齢によって変形することなどにより、脊髄や神経が圧迫される疾患です。首から手にかけて痛みやしびれ、脱力感などが現れるほか、下肢にも同様の症状が出たり、歩行障害、排尿障害が生じたりする場合もあります。

腰痛症(ようつうしょう)

腰痛とは、さまざまな原因によって引き起こされる腰の痛みの総称です。腰を構成する腰椎と呼ばれる骨に負担がかかったり、障害が起きたりする場合や、がんや細菌感染が原因となる場合もあります。いわゆる「ぎっくり腰」と呼ばれる短期間で痛みが取れる急性腰痛症と、痛みが強くなったり、弱くなったりする状態が長期間続く慢性の腰痛症があります。

腰椎椎間板ヘルニア(ようついついかんばんへるにあ)

腰痛とは、さまざまな原因によって引き起こされる腰の痛みの総称です。腰を構成する腰椎と呼ばれる骨に負担がかかったり、障害が起きたりする場合や、がんや細菌感染が原因となる場合もあります。いわゆる「ぎっくり腰」と呼ばれる短期間で痛みが取れる急性腰痛症と、痛みが強くなったり、弱くなったりする状態が長期間続く慢性の腰痛症があります。

変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう)

加齢や肥満などが原因で膝の関節の軟骨がすり減って関節炎が生じ、進行すると膝が変形していく疾患です。初期には階段の上り下りや正座時などに痛みが生じるようになり、進行すると骨同士がぶつかることで強い痛みが生じるとともに、膝が変形し、歩行困難になります。高齢者、とくに女性に多くみられます。

糖尿病性神経障害(とうにょうびょうせいしんけいしょうがい)

糖尿病による高血糖が原因で毛細血管が傷つき、酸素や栄養を神経に運ぶことができなくなり、感覚や運動に関係する神経などに悪影響を来たす糖尿病合併症のひとつです。糖尿病の合併症の中でも最も早く、高頻度で発症します。感覚神経が障害されると、電気が走るような、針にさされるような痛み、あるいはしびれが左右対称に手足に生じます。

関節リウマチ(かんせつりうまち)

全身の関節の内側に炎症が起きる疾患で、関節の腫れに伴い、強い痛みが生じます。進行すると関節が破壊され、変形する場合もあります。原因ははっきりと解明されていませんが、免疫に何らかの異常が起こり、正常な組織を攻撃することで炎症などが起きていると考えられています。中高年の女性に多くみられます。

術後遷延痛(じゅつごせんえんつう)

手術をした後、傷口が治癒したにも関わらず、長期にわたり続く痛みのことです。手術の際に神経が損傷されることなどによって、ささいな刺激でも脳に信号が送られ、痛みを感じてしまう神経障害性疼痛です。手術に至った疾患や、手術方法などによって、生じる頻度や症状は異なります。

帯状疱疹後神経痛(たいじょうほうしんごしんけいつう)

皮膚に赤い斑点や水ぶくれができて、ピリピリと痛む「帯状疱疹」の皮膚症状が消失した後も続く、慢性化した痛みを帯状疱疹後神経痛といいます。触れるだけで痛みを感じる状態(アロディニア)や電気が走るようなと表現される痛みが現れることもあります。数か月程度で収まる場合もあれば、数年以上の長期にわたるケースもあり、高齢者や免疫力が低下した人などによくみられます。

   
ズキズキ ビリビリ ピリピリ ジンジン ズキンズキン ガンガン キリキリ ズンズン ドクドク ギリギリ ギュー ギシギシ ゴリゴリ ゴキゴキ ズキッ ガクガク チクチク ズーン ドーン コリコリ ピキピキ チリチリ
※フキダシはオノマトペ表現の出現率に応じた大きさになっています。※イラストはイメージです。 PDFダウンロード(4.0MB)
 

痛みのオノマトペランキング

痛みのオノマトペを、体への刺激や炎症によって起こる「侵害受容性疼痛」と神経が興奮して起こる「神経障害性疼痛」、さらにこの両方の特性を併せ持つ「混合性疼痛」の三種類に分類すると、ある傾向が見えてきました。

※フキダシはオノマトペ表現の出現率に応じた大きさになっています。※イラストはイメージです。  

解説:痛みのオノマトペ調査結果に関して

二つの「ONOMATOGRAM」を読み解くことで、痛みの種類とオノマトペの意外な関連性が見えてきました。医学的、そして言語学的な見解をご紹介します。

1.医学の見地から

小川 節郎(日本大学総合科学研究所 教授・医学博士)

 調査結果を見ると、痛みを伴う疾患とそれぞれの痛みを表現するオノマトペの間にいくつかの興味深い関連性を見出すことができます。例えば、「ズキズキ」というオノマトペで表現される痛みが多い中、神経が障害されることで生じる帯状疱疹後神経痛、糖尿病性神経障害では「ピリピリ」が使われています。また、神経性の痛み(神経障害性疼痛)と、刺激や炎症に伴う痛み(侵害受容性疼痛)の特徴を併せ持つ混合性の痛みでは「ズキズキ」と「ピリピリ」の双方が多用されています。また、頭痛における「ガンガン」や、神経性や混合性の痛みにおける「ジンジン」のように、特徴的なオノマトペで表現される痛みがある一方、腰痛症などのように多様なオノマトペで表現される痛みもありました。
 痛みは患者さんにしか感じることができない上、言葉で表現することが非常に困難です。
一方で、完全に取り除くことが難しい慢性の痛みの治療の際には、少しでも患者さんの負担を軽くするために改善目標を立て、医療従事者と患者の間で痛みの症状に対する共通認識を持った上で治療を進めていく必要があります。
 今回の調査結果は、オノマトペが短い言葉ながら、患者さんの痛みを端的に、適切に表現できる可能性を示唆しています。これを精査し、体系立てていくことで、将来的にオノマトペが医療者と患者の共通認識を作ることを助けるツールとして活用できるかもしれません。

      

2.言語学の見地から

竹田 晃子(国立国語研究所 時空間変異研究系 特任助教)

 調査結果で回答された痛みのオノマトペは、語形と意味にいくつかの特徴がみられます。
 ①ズキズキ/ガンガンなどのような繰り返し語形と、②ズキッと/ガンと などのように単独の語形に「(ッ)と」を付けて使う語形、③ズキリ(と)/チクリ(と)などのようにリで終わる語形、④ズキン(と)/チクン(と)などのようにンで終わる語形と、⑤さらにそれらを繰り返すズキンズキン/チクリチクリ(と)のような語形があります。
 一定の時間幅を持つ痛みは①⑤のような繰り返し語形で表現され、瞬間的な痛みは②③④のような繰り返さない語形で表されます。また、リで終わる語形は、瞬間的ではありますが静かに重くのしかかるような痛みを表現するのに対して、単独語形+「(ッ)と」の語形は衝撃をともなう痛み、ンで終わる語形は瞬間的な刺激の余韻が後を引くような痛みを表します。
 もっともよく使われる痛みのオノマトペはズキズキですが、これは、「疼く(うずく)」という動詞に関連があるように思われます。「疼く」は、からだの奥で神経を刺激されるような感覚を表す語で、からだの痛みだけでなく、心の痛みを表すこともあります。ズキズキは、この「疼く」とほぼ同じような痛みの表現に使われています。
 痛み以外の表現との関連が考えられるオノマトペもあります。例えば、ガンガンは鐘や物を打つ音を表す語でもありますが、頭痛の表現にも使われており、頭を叩かれるイメージと関連があるように思われます。他にも、ビリビリは、紙や布が裂ける音や空中を電気が走る音を表す語ですが、神経に強い刺激を受けたときにしびれたり震えたりするような痛みも表しますので、電気的な刺激を受けたときの感覚をイメージさせる痛みに使われると考えられます。
 このように、痛みの種類とその表現に使われるオノマトペの関係を把握することは、実際に痛みの説明や理解に役立つと考えられます。