題名

ある日、診察室で患者が医師に言いました。

特集2
方言の痛み表現を知る
コラム
01
所属
国立国語研究所
氏名
竹田 晃子

ことばの壁に対する取り組み

 これまでも、医師や看護師によって、各地で方言手引きや辞書が作られてきました。ことばがわからなければ患者の状態を把握できないという事情があったためと考えられます。たとえば、松木明(1982)『弘前語彙』、横浜礼子(1991)『病む人の津軽ことば』、山浦玄嗣(2000)『ケセン語大辞典』上下巻ほか、黒岩卓夫・横山ミキ(1993)『医者が集めた越後の方言集―お年寄の心を聴くために―』、檀浦生日(2007)『診療室の備後弁』,大分保健医療方言研究会(2001)『大分保健医療方言集』,加治工真市監修・稲福盛輝編著(1992)『医学沖縄語辞典』などがあります。
 方言学や社会言語学の研究分野でも,医療・福祉における貢献をめざす学問として、「ウェルフェア・リングイスティクス」や「臨床方言学」が提唱されてきました。これらを継承しつつ、より具体的な方策を追究する岩城裕之・今村かほる両氏の研究グループによって、医療現場向けの方言資料が作成されてきました。

オノマトペに焦点をしぼった方言手引き作り

 しかし、東日本大震災で大きな被害を受けた岩手県・宮城県・福島県の方言を対象にした医療現場向けの手引きは、まだありませんでした。また、岩城・今村両氏の研究では、名詞や動詞などの一般語彙に比べて、感覚的な表現であるオノマトペの理解は特に難しいとされていました。そこで、医療現場での利用を目的とし,体調や気分などを表すオノマトペに焦点をしぼった方言手引きを企画したのです。
 オノマトペには、体調や気分を表す表現がたくさんあります。共通語では、痛みをシクシク、キリキリ、ズキズキなどと表現することがありますが、各地の方言にも独特なオノマトペがあります。

 

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