題名

難解な医療用語をわかりやすく

特集1
痛みを伝える
コラム
03
所属
国明治大学 国際日本学部 教授
氏名
田中 牧郎

医療用語を分かりやすく

医療者による工夫を

 医療用語が難しいために、医療者の説明が患者によく伝わっていない現状を改善するためには、まずは、医療者が工夫を行うことが大切だと思います。どうすれば分かりやすくなるか、国立国語研究所に医療の専門家と言葉の専門家とが議論する委員会を作って、一つ一つの言葉について様々な角度から繰り返し検討を行いました。その検討、言葉が伝わらない原因に応じて、図1のような類型を立てて、分かりやすく伝える工夫を行っていくのがよいという結論になりました。

日常語で言い換える(類型A)

 患者に知られていない言葉については、誰もが知っている日常語で言い換えることが効果的です。「寛解」という言葉は使わずに、「症状が落ち着いて安定した状態」のように言えば、誰にでもその意味が伝わるでしょう。「エビデンスがある薬」などと言わずに、「研究によって効くことが確かめられている薬」と言えばよいわけです。

明確に説明する(類型B)

 また、言葉は知られていても正しい意味が理解されていない言葉は、明確に説明することが重要です。例えば「炎症」がからだを守るために起きることはあまり知られていませんが、医療者がこの言葉を使うときに、「炎症というのは、からだを守るために、からだの一部が熱を持ち、赤くはれたり痛んだりすることです」のように説明していくことで、その正しい理解が広まるのに役立つでしょう。同じように、知識が不十分な言葉は一歩踏み込んで説明し、誤解されがちな言葉は誤解を解消するような説明が求められます。

重要概念の普及を図る(類型C)

 さらに、言葉が知られていなかったり、理解が不確かだったりするもののなかには、最近になって登場した新しい概念を表すものもあります。例えば「QOL」は、患者が自分で治療のゴールを決めるのに重要な考え方ですが、この考え方が広まれば、医療の無駄をなくしたり、医療への満足感を高めたりするのに役立つでしょう。そのためには、「その人がこれでよいと思える生活の質」などと、この概念のポイントを端的に表す説明を添えて「QOL」という言葉を積極的に使い、言葉とその意味の双方を患者に覚えてもらうような工夫が望まれます。 

「病院の言葉」を分かりやすくする類型
「病院の言葉」を分かりやすくする提案 http://www.ninjal.ac.jp/byoin/
国立国語研究所「病院の言葉」委員会(2009)
 

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