題名

痛みをめぐる医療における「主観」と「客観」

研究課題1
痛みを伝える
コラム
01
所属
慶應義塾大学 看護医療学部 看護学科 教授
氏名
杉本 なおみ

 たとえば、Aという膝の痛みの症状は、大半の人が「ズキズキ」と同じ表現を使うとします。一方、同じ膝痛でもBという症状には、「チクチク」「ジンジン」「ガクガク」と多彩な表現が使われるとします。このことからだけでも、症状Aは多くの人が似たように感じるが、症状Bは人によって感じ方が異なると推測できます。
 このような傾向が分かれば、「痛みを診る医師」の養成に大いに役立ちます。医学生や研修医に対し「症状Bを訴える患者さんを診るときには、一人一人の感覚の違いに注意するように」と教えるのです。
 こうして医師が患者の「ことば」から多くの情報を得られるようになれば、両者にとってよりよい医療が実現します。患者は「共感的」に対応されたと感じ、そのことが医師との関係に好影響をもたらします。一方、医師は患者の症状を細かく切り分けて考え、より適切な治療法を選べるようになります。そうすれば「申し訳なさから顔が曇る」ことも少しずつ減っていくでしょう。
 「膝が痛むので病院に行ったら、お医者さんが『どんな痛みですか』って聞いてくれてね。『シクシクする』としか答えられなかったけど、それでも少しは分かってもらえたみたい…」目には見えない痛みであっても、主観を突き詰めれば、こうして徐々に「見えてくる」ようになるはずです。 

  1. 1 山内涼子・池田祥子 (2007) 慢性疼痛患者の心理 診断と治療 95(6), 861-864.
  2. 2 Murinson, B. B., Gordin, V., Flynn, S., Driver, L. C., Gallagher, R. M. Grabois, M., & the Medical Student Education Sub-committee of the American Academy of Pain Medicine. (2013). Recommendations for a new curriculum in pain medicine for medical students: Toward a career distinguished by competence and compassion. Pain Medicine, 14, 345-350.;
  3. 3 Vowles, K. E., & Thompson, M. (2012). The patient-provider relationship in chronic pain. Current Pain and Headache Reports, 16, 133-138.
  4. 4 山内・池田(2007) p. 861.
  5. 5 Hjermstad, M. J., Fayers, P. M., Haugen, D. F., Caraceni, A., Hanks, G. W., Loge, J. H., Fainsinger, R., Aass, N., & Kaasa, S. (2011). Studies comparing numerical rating scales, verbal rating scales, and visual analogue scales for assessment of pain intensity in adults: A systematic literature review. Journal of Pain and Symptom Management, 41(6), 1073-1093.
 

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