題名

痛みをめぐる医療における「主観」と「客観」

研究課題1
痛みを伝える
コラム
01
所属
慶應義塾大学 看護医療学部 看護学科 教授
氏名
杉本 なおみ

 「痛み」と同じくらい主観的な「めまい」の感覚を例に考えてみましょう。「目が回る」と言って受診すると、「周りが回っている感じですか、それとも自分が回っている感じですか?」と聞かれることがあります。原因を探るための質問です。しかし、日頃からめまいをこのように区別して感じる習慣がなければ、即答できないかも知れません。

 ところが、秋田県の一部の地域には、この2種類のめまいに即した「ことば」が存在します。周りが回っているような感覚は「うるうるじい」、自分がフワフワと沈み込んでいくような感覚は「まぐまぐじい」と表現するそうです。そのため、この地域では医師が患者に「周りが回っている…?」と聞く必要はなく、「うるうるじい、まぐまぐじい」のどちらなのか尋ねればよいのです。患者の方も、日頃からこの2つの感覚を区別して捉えているため、「最近うるうるして…」と自分から説明できるそうです。
 患者の感覚に即したこのような表現は「痛み」にも存在するはずです。そのことばに注意深く耳を傾ければ、患者一人一人が痛みをどのように捉えているのかということの理解が少しは進むのではないでしょうか。

 

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