COLUMN01
題名

オノマトペのない世界は大変!

著者
小野 正弘 (明治大学文学部 教授)

 日本語にはオノマトペが多いと、よく言われます。どれぐらいあるかというと、現在、最大数のオノマトペを載せる『日本語オノマトペ辞典』には、4500語載っています。たしかに、多いような気がします。が、もう少し確認してみましょう。
 実は、この4500語は、『日本国語大辞典 第二版』を母胎としています。『日本国語大辞典 第二版』の総語数は50万語と言われています。4500語のオノマトペですが、ここには、最近のマンガなどにあるようなオノマトペは再録されていません。そのようなものを加えていけば、すぐに増えていくでしょう。それで、話を分かりやすくするために、5000語ということにしましょう。とすると、50万分の5000、つまり、1%です。100語に1つがオノマトペなのです。
 オノマトペは、日本語において、確固たる勢力を持っていると言ってよいでしょう。ですから、もし、これがないと、大変なことになると思います。
 たとえば、急に胃が痛みだしたとします。オノマトペがあれば、「ずきずき」、「しくしく」、「きりきり」などを用いて、その痛みを表現し分けられます。しかし、もし、これらが使えなかったら、どうでしょう。「きりきり」なら、〈細い針のようなもので刺すような痛みが何度も襲ってくる〉とか、〈とても細いヒモのようなもので強くしばり上げられるような〉などとも言えそうですが、たった4文字で言い表せるものなのに、そもそも長ったらしい。だいたい、胃が痛くて苦しいのに、どうして、そんなことで、さらに苦しまなければならないのか、理不尽です。
そう考えれば、オノマトペをもっと有効に活用して説明していったほうが、はるかによいと思えるのではないでしょうか。